アイドル作家が語る「アイドルという物語」 第一弾は向井地美音

WEB文芸界きっての「アイドル作家」板野かも先生が縦横無尽にアイドルの魅力を語り尽くす、「48ers」独占連載エッセイ「アイドルという物語」。
記念すべき第一弾となる今回は、AKB48の「みーおん」こと向井地美音を取り上げて頂きました。

AKB48の次世代エースとして活躍を続け、4月1日のコンサートでは新チームAのセンターに抜擢。先のセンター試験でも堂々1位に輝き、2018年度総選挙で選抜返り咲きに期待のかかる彼女の魅力を板野先生が語り尽くします。

▼向井地美音(むかいち・みおん)プロフィール

公式ニックネーム みーおん
所属事務所 Mama&Son
生年月日 1998年1月29日 (20歳)
出身地 埼玉県
血液型 O型
身長 150cm
合格期 15期生
選抜回数 11回

選抜総選挙
第6回 圏外
第7回 44位(18,392票)
第8回 13位(47,094票)
第9回 17位(35,201票)

次世代エース、新生チームAで堂々センターに

 4月1日、ファン待望のAKB48単独コンサートに沸いたさいたまスーパーアリーナ(SSA)。前田敦子の卒業発表(2012)や渡辺麻友の卒業コンサート(2017)など数々の物語の舞台となってきたこのステージに、この日、AKB48の看板たる新生チームAを堂々率いて歌い踊る小さき女神の姿があった。身長150cmの小柄な身体に巨大な夢を宿したAKBの次世代エース、「みーおん」こと向井地美音である。

 今春始動の新組閣体制のお披露目ともなったこの単独コンサートでは、A・K・B・4の各チームの公演センターの座を誰が射止めるのかがファンの注目の的となっていた。向井地美音が配属された新チームAには、運営の覚えめでたくキャプテンに抜擢されたチーム8兼任の岡部麟、52ndシングル「Teacher Teacher」のセンターに選ばれ話題沸騰中の「2万年に一人の美少女」小栗有以ら、有力なライバルが名を連ねている。
 しかし、いざ伝統のSSAでコンサートのセンターに躍り出た向井地の姿を見て、客席からは歓喜に震える声こそあれ、疑問の声は出なかったであろう。先日の「AKB48グループセンター試験」の堂々たる戦果を、その根底にある彼女の比類なき「AKB愛」を思えば、これからのAKBの看板を託せるのは彼女しか居ないと誰もが確信していたに違いないからだ。

 アイドルとは「物語」である――。不肖私が掲げるまでもなく、熱心なアイドルファンの間でよく口の端に上る言葉である。
 今や常時300人を超すメンバーを抱える48グループといえど、ファンと運営の双方に推され、確固たるセンターの地位を確立できるメンバーは数えるほど。彼女らが共通して有しているものといえば、見た目の可愛さやパフォーマンスの上手さといったこと以上に、見る人の心を惹き付ける「物語」なのである。
 48グループの未来を占う新チーム体制がいよいよ動き出し、向井地本人にとっても運命の分かれ道となる2018年度選抜総選挙を間近に控えた今、向井地美音という少女の「物語」を振り返ってみよう。

AKB第二世代という物語の象徴

 向井地美音が最初は子役として芸能界でのキャリアをスタートさせたのは、巷間よく知られていることである。しかし、人気ドラマ「アンフェア」への出演で一定の知名度を築きながらも、実は、中学に上がる頃には彼女は所属事務所を退所し(後に別事務所に一時的に所属)、芸能活動から一旦足を洗っている。彼女の最初の進学先が地元埼玉では偏差値上位の中高一貫校であったことを見ても、もはや芸能界に戻らず一般人として生きるという選択肢が、この頃の彼女には濃厚にあったのではないかと思われる。

 そんな向井地美音の人生の転機となったのが、当時「ヘビーローテーション」などのヒット曲で世間に一大旋風を巻き起こしていたAKB48との出会いであった。自身のTwitterプロフィールに今も「桜の木になろう新規です」と掲げられているように、彼女は友人に勧められ、シングル「桜の木になろう」(2011)を切っ掛けにAKB48に興味を持ち、一旦は普通のファンとしてAKBを愛好し始めたのである。前田敦子や大島優子といった当時の黄金センター達の輝きは、芸能人と一般人の二つの人生の間で揺れていた彼女の瞳に鮮烈な印象を刻み付けたのに違いない。

 並の少女ならば、そのまま遠き憧れとしてアイドルを眺めているだけで終わったかもしれない。だが、彼女は、恋い焦がれる女神達の戦場に自らも飛び込むことを選んだ。
 恐らく、彼女はこのとき、それまでの人生で最も深く親に感謝したのではないか。倍率数百倍とも言われるAKB48のオーディションに臨む彼女には、持って生まれた可憐さと、文句の付けようのない芸能キャリアがあった。そして何より、他の受験者の追随を許さなかったであろう、AKB48への無限の情熱があった。
 2013年1月19日、第15期生オーディションの合格発表。同年6月5日、武道館コンサートでの初お披露目。新たに研究生となった8名の若鳥達の中に晴れて彼女の姿があった。子役の美音ちゃん改め、AKB48のみーおんの誕生である。

 翌2014年4月、SSAで開催されたAKB48リクエストアワーにて、大島優子から「ヘビーローテーション」のセンターの座を託される向井地美音の姿は誰の目にも鮮明に焼き付いていることであろう。1万8千人の観客の「みーおん」コールを一手に受け、夢に見た「ワンツースリーフォー!」の掛け声を堂々叫ぶ彼女の瞳には、後にこの会場でチームAセンターを務める未来が既に見えていただろうか。

 アイドルとは「物語」である――と、不肖私も常々思っている。
 夢のきざはしを駆け上がる少女達の物語は皆一様に美しいが、そんな中でも向井地美音という存在から目が離せないのは、彼女の物語が、「有名人になりたい」でも「アイドルになりたい」でもなく、「AKBになりたい」と一心に願い、その夢を叶えた少女の物語であるからだ。
「アイドルになりたい」と望んでそれを叶える者は、荻野由佳らの例を挙げるまでもなく星の数ほども居る。だが、他のどのアイドルグループでもない、AKB48という存在に明確に憧れ、一念発起してその憧れに挑み、憧れのメンバー達から新センターの座を継承するという美しき物語の軌跡は、誰にでも容易く描けるものではない。

 そしてこれは、アイドル戦国時代と言われる2010年代、AKB48という舞台でこそ生まれ得た物語でもある。一般人に戻りかけていた向井地美音が友人に勧められて好きになったのが、例えば「ももクロ」だったらどうなっていたかと考えてみるとよい。永久不変のメンバー達と一対一で紐付けられたグループではなく、世代交代を繰り返しながら徐々にメンバーが入れ替わっていくAKB48であったからこそ、彼女は「憧れるだけではなく自らそのメンバーになりたい」という夢を抱き得た。秋葉原の片隅でひっそりと産声を上げたアイドルグループが、7年の月日を経て、一人の少女にそうした夢を抱かせうる存在となったのである。向井地美音の物語は、AKB48がそこまでの存在になった象徴なのだ。

 かつて秋元康プロデューサーは「AKB48とは高橋みなみのことである」と言った。恐れ多くもその言葉を借りることが許されるならば、私はこう述べたい、「AKB48第二世代とは向井地美音のことである」と。

「まゆゆの後継者」――新たに託された物語

 2017年末。「最後の神7」と呼ばれた渡辺麻友が、多くのファンに惜しまれながら秋葉原の戦場を後にした。11年にわたりAKB48を支え続けたシアターの女神の卒業に際し、運営もメディアもファンもこぞって盛り上げていた一つの話題がある。彼女の置いたマイクを誰が継承するのか――そう、「渡辺麻友の後継者」の件である。
 その白羽の矢が立てられたのが、次世代エースの呼び声高い向井地美音と、チーム8の看板娘こと小栗有以であった。運営は「ポストまゆゆ」を巡るこの二人の対決構造を意図的に演出しに掛かったと見え、10月の卒業コンサートでも、12月のAKB紅白でも、同月の卒業公演でも、渡辺麻友の両隣には常に向井地と小栗の姿があった。来歴も個性も大きく異なるこの二人のどちらが、運営とファンが認める「ポストまゆゆ」の地位を得るのか。2017年末の渡辺麻友卒業の時点では、二人の立場はほぼ互角であったように思われる。

 そして今年。初代神7の全員が去ったAKBの光景にファンもようやく慣れてきた頃、向井地と小栗の二人はそれぞれに後継者候補の面目躍如を果たした。先に述べたように、小栗有以は満を持して52ndシングルの表題曲センターに初抜擢。それに先立つこと数日、向井地美音は超難関の「AKB48グループセンター試験」で他を大きく引き離す1位を獲得し、自身最大の個性であり武器であるAKB愛を内外に見せつけ、成績上位メンバーに与えられる特別シングルのセンターの座を勝ち取った。一般への露出では、シングル表題曲の(それも、一年で最も売れる総選挙投票券付きシングルの)センターの座を射止めた「2万年に一人」の小栗に軍配が上がるかもしれないが、己の強みを活かした活躍では我らがみーおんも負けていない。

 6月の総選挙に向け、「神」の輝きを継がんとする二人の戦いはいよいよ佳境に入ったといえよう。そう、総選挙。向井地にとって絶対に負けられない、過去の自分との戦いである。

翼はいらない。その足でもう一度

 自身初のセンターシングル「翼はいらない」を旗印に、2016年度選抜総選挙で13位と躍進した向井地美音が、翌2017年、17位で驚愕の選抜落ちを喫してしまったことは記憶に新しい。2017年度総選挙は、速報時点から荻野由佳ら新潟勢の「謎の躍進」による番狂わせがあり、筋金入りのファンにも本戦の予想が付かない戦いだった。それでも、多くのファンは、あの無人の沖縄会場に響き渡る「17位、向井地美音」の声に耳を疑ったに違いない。誰が考えられただろうか――AKB新聞の記者をはじめとする多くの識者達が「神7入り」さえ信じて疑わなかった稀代の若手エースが、まさかの16位圏外に終わるなどと。

 2017年度総選挙における予想外の惨敗は、確実に向井地本人の、そしてAKB48の運命の流れを変えた。口さがないファンの中には、「総選挙で結果を出せなかった向井地をいつまで運営は推し続けるのか」と厳しい意見を述べる者もいる。電脳空間を駆け巡る「ポストまゆゆ」論議には、決まって、選抜落ちの向井地では貫目が足りぬとの批判が付いてまわる。12周年公演でAKB48劇場の二本柱にテープを貼った際にも、元日公演でセンターを務めた際にも、そこはお前の居場所ではないと苛烈な批判を浴びせる声が絶えることはなかった。選抜落ちという「鬼の首」を得た旧来のアンチに加え、この一年でアンチに回った者達も、口角泡を飛ばす勢いで「向井地AKB」を否定しにかかる。
 だが、心配は要るまい。彼女自身が決して折れていないのだから。

「翼はいらない。その足でもう一度」――これは私が考えたフレーズではなく、2017年度総選挙の後に刊行された「水着サプライズ」のアオリ文を引用したものであるが、翼を溶かされ地に堕とされた向井地美音の看板シングルが「翼はいらない」であるというのも、思えば不思議な運命の符合なのかもしれない。
 たとえ翼を奪われようとも、彼女には夢に向かって一途に駆け抜けてきたその足がある。2018年度総選挙の立候補にあたり、改めて「目標は神7」と宣言した向井地美音。彼女が今度こそ光を掴めることを信じ、我々も全力で応援しようではないか。

「ここからが本当の私の物語の始まり。目を逸らさず、見ていてください」――2017年の敗戦後、Twitterにて彼女が綴った言葉である。今こそ見届けよう。アイドルという物語を全力で体現し続ける彼女の未来を。

(文責 板野かも)

執筆者の紹介

板野かも

板野かも

作家・ライター。
AKB48グループをはじめとする女性アイドル関連の芸能記事を多く手がけ、また2017年よりWEB小説サイト「カクヨム」にてアイドルをテーマにした小説を執筆。WEB文芸界きってのアイドル通として知られる。

関連するまとめ

元TOKIO・山口達也の余罪が続々判明! AKB48・峯岸みなみも未成年の頃に口説か…

2018年4月25日、女子高生にわいせつな行為をしたとして書類送検されたことが報じられ、日本中を騒がせたTO…

forty-eighter / 2269 view

柏木由紀・著 小説「アイドル誕生!」が発売決定! プロデュース公演でも話題のゆきりん…

AKB48/NGT48の「ゆきりん」こと柏木由紀の子供向け自伝小説「アイドル誕生! こんなわたしがAKB48…

forty-eighter / 217 view

【ゆきりん】柏木由紀がランジェリーブランド「ラヴィジュール」とコラボ! 小嶋陽菜のユ…

AKB48/NGT48の柏木由紀が、女性に人気のランジェリーブランド「Ravijour(ラヴィジュール)」の…

forty-eighter / 646 view

関連するキーワード

アクセスランキング

人気のあるまとめランキング

2018年 AKB48グループセンター試験