アイドル作家が語る「アイドルという物語」 第二弾は北原里英

WEB文芸界きっての「アイドル作家」板野かも先生が縦横無尽にアイドルの魅力を語り尽くす、「48ers」独占連載エッセイ「アイドルという物語」。
第二弾は、4月14日に新潟の朱鷺メッセで卒業コンサートを開催したばかりの、NGT48初代キャプテン・「きたりえ」こと北原里英を取り上げて頂きました。

AKB48からの移籍以来、NGTの個性豊かなメンバー達を頼もしく導き、新潟の街にアイドルの輝きを根付かせてくれたきたりえの物語を、板野先生が語り尽くします。

▼北原里英(きたはら・りえ)プロフィール

公式ニックネーム きたりえ
所属事務所 太田プロダクション
生年月日 1991年6月24日 (26歳)
出身地 愛知県
血液型 A型
身長 157cm
合格期 AKB48 5期生
選抜回数 AKB48 30回、SKE48 1回、NGT48 3回

選抜総選挙
第1回 13位(1,578票)
第2回 16位(8,836票)
第3回 13位(27,957票)
第4回 13位(26,531票)
第5回 21位(33,121票)
第6回 19位(34,666票)
第7回 11位(61,566票)
第8回 12位(50,190票)
第9回 10位(45,684票)

彼女も街も夢を見た。夢の1115日

 2018年4月14日。熱気に溢れかえる新潟・朱鷺メッセのアリーナで、私は幾千人の同志達と肩を並べ、一人のアイドルの最後の晴れ舞台を見上げていた。NGT48の結成以来、1115日の長きにわたって新潟の若鳥達を率いてきた、我らがキャプテン、「きたりえ」こと北原里英の卒業コンサートである。

「楽しいことばかりではなかった10年間。私を救ってくれたのは新潟県です」

 終盤、観客達のアンコールに応え、NGTカラーである真紅のドレスに身を包んでステージに現れた彼女は、声を微かに震わせてそう語った。「こんなふうに卒業できることが今でも夢みたいです」――その瞳に光る涙が、彼女の歩んできた「夢の1115日」を物語っていた。
 2007年、16歳でAKB48に加入した北原里英は、アイドル人生の最後の最後で一睡の夢を見ていたのかもしれない。NGTのメンバー達も、我々ファンも、彼女とともに長い夢を見た。新潟の街も夢を見た。素敵な夢であった。

 アイドルとは「物語」である、と私はよく言う。私如きが述べるまでもなく、アイドルファンの多くが、アイドルに最も大事な要素は「物語」であると口を揃える。前田敦子も、大島優子も、指原莉乃も――天下を制した48グループの女王達は、皆それぞれに、唯一無二の「物語」をアイドルというキャンバスに描いてきた者達だ。だが、ただ一人のアイドルが一つの街の運命をも変えたという物語を、私は他に知らない。
 あとは18日の卒業公演を残すのみとなった今、北原里英とNGT48の物語を語ろう。新潟をアイドルの街にしてくれた彼女の物語を。

「夢見る名古屋嬢」から、「新潟の女」へ

 NGT48への移籍を決める前の北原里英は、ともすれば、AKB48グループという物語のメインストリームから外れかけていた存在であったかもしれない。派生ユニット「Not Yet」の結成や、SKE48との兼任、そして「テラスハウス」への出演と、活躍の幅が広がりはするものの、2013年の第5回選抜総選挙では21位で自身初の選抜落ちを喫し、翌年の第6回も19位と振るわず。それとて皆が羨む高順位ではあるのだが、気付けば後輩の横山由依や島崎遥香にも上を行かれ、同期の指原は一足飛びに雲の上。もはや再起の道は残されていないと誰もが思っただろう。そんな彼女の運命を変えたのが、新潟に新設が決まったNGT48への移籍の誘いだった。

 新潟は、海の恵みと地の恵みに溢れ、古くからの文化と現代的な感覚が融合した美しい土地である。しかし、東京や大阪といった大都市圏に比べれば、人口や経済規模において後れを取っているのも事実。新幹線で東京と繋がり、Jリーグチームの活躍に沸き、新宿や原宿と同じファッションビルを作ってみたところで、新潟は東京ではない。この地に全国区のアイドルグループの支店が出来るなどと言われても、当時は誰もピンと来なかっただろう。
 名古屋、大阪、博多に次ぐAKB48の国内姉妹グループを新潟に作ろうというのは、実際、誰の目にも無謀な挑戦と映った。札幌や仙台ならばまだしも、新潟では商業的に成り立つ筈がないと。地元に受け入れてもらえるかどうかもネックであった。新潟にはアイドルの先輩の「Negicco」がいる。地元出身のローカルアイドルが地域に馴染んで頑張っているところへ、中央資本の巨大グループが黒船で乗り込んでも、外敵と見なされ白眼視されるのが落ちなのではないかと。

 そうした下馬評を覆したのは、地域密着・地元貢献を強く打ち出したNGT48の草の根的な活動であった。48グループで初めてお披露目イベントを地元で行ったことに始まり、県内出身メンバーの出身市町村を公開したり、地域のイベントに積極的に参加したりと、NGTは新潟の人々に好かれるための様々な工夫を惜しまなかった。劇場オープンやメジャーデビューは当初の目論見から遅れたものの、その間、NGTのメンバー達は地元自治体の広報イベントや地元企業のCM等に積極的に出演し、「秋葉原のアイドルの地方支店」ではなく「新潟のアイドル」としての自分達の姿を地元の人々に強く印象付けてきた。そして、そうしたNGTの活躍を中心に立って引っ張ってきたのは、キャプテンとして移籍し「新潟の女」となった北原里英に他ならなかった。
 新潟出身でもなく、それまで仕事で縁があったわけでもない。しかし、全くの新天地にやってきた彼女の覚悟が、決して腰掛けのものではないことは、「新潟の女になりました」というキャッチフレーズをはじめとする、あらゆる発言に表れていた。彼女はファンの前で誓ったのだ。5期生の自分が経験できなかった「AKB48の黎明期」を、新潟の地で再現することを。

 その誕生の瞬間から、NGT48は北原里英とともにあった。ドラフト会議で荻野由佳と西潟茉莉奈を選んだのも、加藤美南や高倉萌香ら個性豊かなメンバー達を率いてきたのも彼女だ。この点、既に出来上がっていたHKT48に後から移籍した指原や、同じNGTメンバーでもほぼ名義貸しに近い柏木由紀とは立場が異なる。先生と生徒ほども歳の離れた後輩達に交じって、県内のイベントを駆け回る彼女は、名実ともに「新潟の女」となっていた。
 地域活性化の鍵を握るのは「若者・バカ者・よそ者」であると言われる。我らがキャプテンは既にアイドルとして若くはなく、バカ者(突拍子もない発想や言動で変革をもたらす者)でもなかったかもしれないが、縁もゆかりもない新潟のために懸命に汗を流す「よそ者」の姿は、確かにこの街の人々の心を動かした。「中央から来た子がこんなに頑張ってくれているのなら、ひとつ、彼女が率いる子達のことも応援してみよう」――そうした動機でNGTに好意的な態度を示すようになった中高年層は多いと聞く。もちろん、加藤美南らメンバー達自身の頑張りも大きかったに違いないが、上に立つ北原が真摯に新潟という土地に向き合ってきたことが、NGTを懐疑的に見ていた人々の心を溶かしていったことに異論はないだろう。

街が彼女の運命を変え、彼女が街の運命を変えた

 2015年8月のステージデビュー、2016年1月の劇場オープン、そして同年6月のAKB48選抜総選挙の新潟開催。数々のイベントを経て、いつしかNGTの存在は完全に地元に根付き、街の人々のみならず県政や市政も全面的に「NGT支持」を示すようになった。新潟財界からのバックアップも凄まじく、その結果として2017年の総選挙で何が起きたかは今さら語るまでもない。今年2018年には、新潟市の移住プロジェクトとタイアップし、NGT48の2期生オーディションの審査に新潟市長が参加することも決まっている。
 アイドル戦国時代と言われて久しい現在、今やどの都道府県にも漏れなく地域密着のアイドルグループが存在する。だが、新潟ほどアイドルと地元が相思相愛である土地は、全国にも他に例を見ないのではないか。路線バスの行き先表示にNGTの曲名が並ぶお遊びももはや見慣れたものであるし、先日の朱鷺メッセでのコンサートに際しては、新潟駅のホームに東京からの「Maxとき315号」が滑り込んだ瞬間、かの曲のメロディがホームに流れ出したという話もある(私は単独コンサートの前日に別のとき号で新潟入りしていたため、その感動の現場を見逃したのが惜しまれる)。自治体も企業も人も、こぞってNGTを盛り上げてくれているのが、今の新潟の光景なのだ。

 北原里英という一人のアイドルにとって、NGTへの移籍が運命の転機であったように、新潟の街にとってもまた、彼女が来てくれたことは奇跡であったのかもしれない。もしも発足時のHKTのように、全員が新人で率いる者が居ないという状態でスタートしていたら、今日のNGTの成功はあったかどうか。NGTのキャプテンに着任したのが誰か別の先輩であったら、新潟の人々はNGTを受け入れていたかどうか。
 歴史のIFを述べても意味がないが、少なくとも、現にNGTが歩んできた苦節と栄光の日々が北原キャプテンとともにあったことは、卒業コンサートのアンコール後に大画面に映し出された、メンバー各々からの直筆メッセージが証明している。キャプテンとの別れに際し、「新潟に来てくれてありがとう」と感謝を綴ったメンバーのなんと多かったことか。
 彼女が新潟に来たことが、NGTの未来を決定した。そして、新潟は、今や東京や名古屋などの大都市と肩を並べるアイドルの街となった。彼女一人の存在が、一つの街の運命さえ変えたのかもしれないのだ。

 アイドルの卵から孵ったばかりの若鳥達に翼を与え、羽ばたくすべを教えた彼女が今、自らの夢に向かってこの街から飛び立ってゆく。
 だが、彼女の心は今後もNGTとともにあるだろう。昨夏の卒業発表時、彼女は「今後はNGTの一番のファンとして応援していく」と述べ、その後のインタビューでは「卒業後も新潟の女であり続ける」とも語った。この先、戦いの場所をどこに移そうとも、全てのNGTメンバーの、ファンの、街の人々の心に、彼女はそっと寄り添い続けてくれるに違いない。

 アイドル北原里英の最後の1115日は、裏日本の小さな地方都市をアイドルの街に変えた奇跡の物語だった。
 そのバトンは後輩達に手渡され、若き朱鷺達の青春の時計がいよいよ自力で回り始める。世界へと繋がる空は青く澄み渡り、春の日差しが暖かく街を照らしている。
 見届けよう、次の物語を。彼女が育てたNGT48の第2章を。

(文責 板野かも)

執筆者の紹介

板野かも

板野かも

作家・ライター。
AKB48グループをはじめとする女性アイドル関連の芸能記事を多く手がけ、また2017年よりWEB小説サイト「カクヨム」にてアイドルをテーマにした小説を執筆。WEB文芸界きってのアイドル通として知られる。

告知

来る4月20日より、WEB小説サイト「カクヨム」にて、板野先生の執筆によるNGT48のドキュメンタリー小説「Project TOKI」の連載が始まります。NGTファンの方は漏らさずチェック!

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