アイドル作家が語る「アイドルという物語」 第三弾は松井珠理奈

WEB文芸界きっての「アイドル作家」板野かも先生が縦横無尽にアイドルの魅力を語り尽くす、「48ers」独占連載エッセイ「アイドルという物語」。
第三弾は、今年の選抜総選挙でいよいよ初の1位に王手をかける、SKE48のエースオブエース・松井珠理奈を取り上げて頂きました。

2008年のSKE48結成以来、青春の全てをSKEと48グループに捧げて走り続けてきた珠理奈の物語を、板野先生が語り尽くします。

▼松井珠理奈(まつい・じゅりな)プロフィール

公式ニックネーム じゅりな
所属事務所 アービング
生年月日 1997年3月8日 (21歳)
出身地 愛知県
血液型 B型
身長 163cm
合格期 1期生
選抜回数 SKE48 22回、AKB48 40回

選抜総選挙
第1回 19位(1,371票)
第2回 10位(12,168票)
第3回 14位(27,804票)
第4回 9位(45,747票)
第5回 6位(77,170票)
第6回 4位(90,910票)
第7回 5位(105,289票)
第8回 3位(112,341票)
第9回 3位(113,615票)

栄に君臨する若き太陽、「ファンは家族」と語る

 2018年4月28日。名古屋の日本ガイシホールにて、SKE48の10周年突入を記念した単独コンサートが華々しく開催された。「友達100人できるかな?」と題したそのコンサートの壇上で、SKEを率いる若き太陽・松井珠理奈は、満員の客席に向かい、「皆さんは友達というより、家族だと思っています!」と元気な叫びを響かせた。
 そう、家族――。その言葉を聞いたとき、会場の古参ファン達は思い出したかもしれない。時に妹のように、あるいは娘のように、大きなお兄さん達に明るい笑顔を振りまいてきた、幼き日の「じゅり坊」の姿を。あれから10年。思えば遠くまで来たものだ。

 2008年秋、名古屋・栄の街を激震させた弱冠11歳の最年少エース。秋元康プロデューサーをして「10年に一人の逸材」と言わしめた、輝けるダイヤモンドの原石。あの前田敦子とタメを張る小学生とは一体何者なのか――姉妹グループの誕生自体には興味を示さなかったAKBファン達さえも、「大声ダイヤモンド」のダブルセンターを堂々務める彼女の姿には目を見張った。秋葉原から飛び出し、日本を制する48グループの第一章は、松井珠理奈とともに始まったのだ。
 アイドルとは「物語」である、と、私がここに書くのも三度目になる。この10年、常にSKEの先頭に立ってきた彼女は、その黒い瞳にどんな物語を映し続けてきたのか。地元名古屋での開催となる2018年度選抜総選挙にて、初の玉座に手をかけんとしている今、スーパーエース松井珠理奈の物語を振り返ってみよう。

シングル松井の瞳に映るもの

 SKEにとって数々の思い出の舞台となったガイシホール。中でも記憶に新しいのは、2017年9月24日、AKBじゃんけん大会の同日に開催された、1期生・大矢真那の卒業コンサートだ。
 22名でスタートしたSKEの1期生も、気付けば珠理奈と真那の二人きり。コンサートのクライマックス、手を繋いで登場し「神々の領域」を歌う二人の姿に、古参ファン達は彼女達の歩んだ9年間を思い涙した。珠理奈もまた、その瞳に大粒の涙を溢れさせ、ただ一人残った同期の門出を祝福していた。

 同じ時を歩んできた盟友との別れ――それだけではない寂しさを、彼女は涙の裏で噛み締めていたかもしれない。松井珠理奈と大矢真那。共に栄の黎明を支えた功労者といえども、残念ながら二人の立場は一度も対等などではなかった。この友もまた、自分と同じ神の領域に入ってくることは出来なかった――。ぎゅっと手を繋ぎ、微笑みながら、孤高の女王は何を思っただろうか。
 先頭を走る者は孤独だと言われる。彼女の前に先輩の背中はなく、追いすがってくる後輩も未だ居ない。最初で最後のライバルであった玲奈の卒業後、「シングル松井」となった珠理奈は、誰かが追いついてくれるのを頂上で待ち続けていたのかもしれない。だが、遂に誰一人として彼女と並び立つ者は現れないまま、最年少エースは最後の1期生となってしまった。

 それからの珠理奈は、少し変わったように思う。SKEを愛する気持ちはそのままに、人間としての「遊び」というべきか、自由さのようなものが解放されてきた。シングルセンターの座を小畑優奈に明け渡したことについても、以前ほど悔しそうな顔を見せなくなった。
 AKB新聞の森本記者もこう言っている。この一年を経て、彼女は「孤高のエース」から「私たちの珠理奈」になったと。公演のMCで山田樹奈にいじられたり、無邪気にプロレスを楽しんだりする彼女の姿は、トップに執着していた頃の彼女にはあまり見られなかったものだ。センターの座を手放し、同期内での序列争いからも解放されたことで、やっと彼女は一人の少女に戻れたのかもしれない。

 だが、戦いは終わらない。彼女にはまだ大きな使命が残されている。SKEを去っていった数多の同輩、後輩達の思いを一手に背負って、選抜総選挙1位のトロフィーを名古屋に持ち帰るという最後の使命が。

48グループ節目の年、宿命の少女は初の天下取りへ

 SKEが10周年に突入するとともに、AKB48選抜総選挙もまた10度目の開催を迎える。
 栄のファン達の盛り上がりとは裏腹に、多くの48グループファンは、今年の総選挙を、史上最も「白ける」総選挙と捉えているかもしれない。北九州だの別府だのと引っ張りに引っ張った末、今年の開票イベントの開催地は初の名古屋と発表された。開催地一般公募という見え透いた茶番劇。指原不在、山本不在、柏木不在と三拍子揃ったこの年に、予定調和のナゴヤドーム。全ては「将軍様」戴冠に向けた出来レースであるとの批判は後を絶たない。コアな48グループファンであればあるほど、運営の珠理奈推しに辟易し、アンチに回る者も少なくないのだ。

 しかし、敢えて言おう。青春の全てをアイドルに捧げ、10年にわたり戦い続けてきた功労者たる彼女を置いて、一体誰が今年の玉座に相応しいというのか。大人達の手で現人神に祭り上げられ、逃げも潰れもせずにその役目を果たし続けてきた一人の少女が、汗と涙の日々の果てに栄冠を手にするのは、責められるべきことなのか。
 運営とファンはアイドルに「物語」を求める。しかし、全ての少女がそれに応えられるとは限らない。この10年、「推され」の重圧に負けず、彼女は求められた物語を全力で走り続けてきた。そろそろ報われてもいい頃合いだろう。彼女が長い物語を見せ続けてくれたことに対し、我々ファンもまた全力で報いるべきではないのか。

 選挙に強いSKE、という言葉がある。SKEファンが投票系イベントに強いのは、毎年の総選挙のランクイン人数や、本店リクアワでの「赤いピンヒールとプロフェッサー」を思い返せば明らかであろう。
 これに関して、つい先日、私の目の前でも興味深い出来事があった。この連載エッセイで次に取り上げたいメンバーとして、私は、荻野由佳、岡田奈々、樋渡結依、松井珠理奈の4人を挙げ(完全に私の好み100%の人選である)、サイトスタッフがTwitterで「次は誰の記事が読みたいですか」とアンケートを取ってくれたのだ。当初は岡田奈々や荻野由佳が優勢だったそのアンケートだが、SKEファン方面にツイートが拡散された瞬間、凄まじい勢いで珠理奈1人に票が集中し、どこぞの指原も目ではない得票率を記録してしまった。その結果、私はこうして珠理奈のエッセイを書いているわけだが、ネットの片隅で起きたこの小さな出来事一つをもってしても、投票事に懸けるSKEファンの熱意が垣間見られるではないか。

 そんな栄の猛者達にとって、今年の総選挙は天下分け目の戦場である。悲願の玉座に腰を下ろした時、十年に一人の少女の物語は初めて一つの区切りを迎える。もちろん、それからも彼女はSKEを引っ張り続けてくれるだろうが、そこに総選挙1位の肩書が有るのと無いのとでは、その双肩に掛かる重圧が天と地ほど違うだろう。肩の荷を下ろすには宿願を叶えるしかないのだ。できることなら彼女には、重荷から解放され、伸び伸びと走り続けて欲しい。
 宮脇咲良の物語も、荻野由佳の物語も、岡田奈々の物語も私は好きである。だが、今年に限っては、珠理奈が報われる物語が見たい。他のグループのファンも、今年は彼女の「約束された勝利」を寛大に見てやってはどうか。それは確かに出来レースかもしれないが、48グループに人生を捧げてくれた少女に対する恩返しでもあるのだ。

 革命の時は目前に迫っている。姉妹グループ出身者が初の1位に輝いたとき、AKB48グループの物語は新たなステージに突入する。10年前、一度は滅びかけたAKBが「大声ダイヤモンド」で再起を果たした時のように。
 新たな時代の号砲を、10年越しに同じ少女が鳴らす――そんな奇跡の物語が見られることを信じて、灼熱のナゴヤドームを楽しみに待ちたい。願わくば、そこに太陽の笑顔があらんことを。

(文責 板野かも)

執筆者の紹介

板野かも

板野かも

作家・ライター。
AKB48グループをはじめとする女性アイドル関連の芸能記事を多く手がけ、また2017年よりWEB小説サイト「カクヨム」にてアイドルをテーマにした小説を執筆。WEB文芸界きってのアイドル通として知られる。

中でもSKE48への思い入れは強く、代表作「48million ~国民総アイドル社会~」は、遠い未来の名古屋を舞台に、松井玲奈らしきアイドルの輝きを受け継いだ少女が、松井珠理奈を思わせるライバルと激突する話。
近未来の部活アイドルを描いた作品「IDOLIZE」にも、名古屋のアイドル「ジュリナ」の娘という設定のライバルキャラが登場する。

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