アイドル作家が語る「アイドルという物語」 第四弾は荻野由佳

WEB文芸界きっての「アイドル作家」板野かも先生が縦横無尽にアイドルの魅力を語り尽くす、「48ers」独占連載エッセイ「アイドルという物語」。
第四弾は、昨年の選抜総選挙で「神7」に大躍進したシンデレラガール、NGT48の「おぎゆか」こと荻野由佳を取り上げて頂きました。

今年の総選挙で彼女は真価を証明することができるのか。一途な努力で夢を追い続けてきたおぎゆかの物語を、板野先生が語り尽くします。

▼荻野由佳(おぎの・ゆか)プロフィール

公式ニックネーム おぎゆか、ゆか
所属事務所 ホリプロ
生年月日 1999年2月16日 (19歳)
出身地 埼玉県
血液型 A型
身長 160cm
合格期 ドラフト2期生
選抜回数 NGT48 3回、AKB48 4回

選抜総選挙
第8回 95位(9,403票)
第9回 5位(73,368票)

運命のドラフトから3年、ファンに綴った手書きの感謝

 2018年5月10日。いつも全力のはっちゃけでファンを笑わせているNGT48荻野由佳のTwitterアカウントに、珍しく(?)真面目な内容のツイートが投稿された。手書きのメッセージに懐かしの写真を添えて投稿されたそれは、彼女の人生の転機となった第2回AKB48グループドラフト会議から丸3年の節目に合わせ、ファンへの感謝を述べるものだった。

 4年前の、5年前の、6年前の彼女には、果たして想像できただろうか。一つのアイドルグループのセンターに立ち、どこまで続くとも知れぬ青空の下で喝采を浴びる己の姿を。同期生の中で誰より早くTwitterアカウントの開設を許され、7万人近いフォロワーに向けて日々笑顔のアイコンを発信する己の姿を。
 そう、きっと、具体的な姿は思い描けずとも、彼女は夢見続けていたのに違いない。幾度もの泥にまみれ、満身創痍の身体で立ち上がるたびに。いつの日か野望を叶え、自分を拒み続けた世界に革命の旗を翻す時を。

 アイドルとは「物語」である――と、多くの人の言葉を借りて私がここに書くのも四度目になる。
 どんなアイドルの物語にも欠かせないのは、前向きに夢に挑み続ける心だ。ひたむきな汗の輝きと、それを見守る多くのファンの願いが重なるとき、劇場のスポットライトはか弱き少女をシンデレラストーリーの主人公に変える。
 12時の鐘を目前に控えた今、改めて彼女の物語を振り返ろう。偉大な先輩から受け継いだただ一つの言葉を胸に、今も全力で走り続ける荻野由佳の物語を。

努力は必ず報われる――苦労娘の見たAKBドリーム

 一説には「友情」「勝利」と並んで物語の必須要素とも言われる「努力」。口にするのは容易いが実行は難しいこの語を巡り、米国の発明王からボクシング漫画のキャラクターに至るまで多くの人物が金言を残してきた。曰く、天才とは99%の努力と1%の閃きである。曰く、努力した者が全て報われるとは限らないが、成功した者は皆努力している……。
 そして、我らが初代総監督高橋みなみは、自らの人生訓として、そして後輩達へのエールとして、単純明快なこの言葉をAKBに残した。曰く、「努力は必ず報われる」と。
 少なからず、この言葉を胡散臭いと思う者もいるだろう。現実には努力しても報われぬ者が大半である中、努力すれば報われるとは、幸運に恵まれた一握りの者が生存バイアスで語るマウンティングに過ぎないと。確かにその見方も間違ってはいまい。こと芸能の世界においては、ただ幸運の波に乗せられて成功を掴んだように見える者は枚挙にいとまがないかもしれない。
 だが、こうも言えよう。アイドルとは、99%の努力と1%の幸運で夢を掴む世界であると。
 努力と幸運は車の両輪。99%の努力をカンストさせ、それでもなお1%の幸運に巡り合えず夢破れる者は多い。同時に、努力が足りない者のもとに1%の幸運が舞い込んできたところで、合わせても100%にはならないのだ。
 では、努力しても努力しても幸運に恵まれず、それでも諦めきれない者はどうすればよいのか。その答えはシンプルだ。幸運を引き寄せるまで挑み続けるだけである。

 48グループのオーディション倍率は数百倍とも千倍以上とも言われる。神の子と凡人を分かつ高い壁に阻まれ、多くの少女が己の限界を知って引き返してゆく。
 荻野由佳もその一人になるかもしれなかった。第13期オーディション、第14期オーディションと立て続けに落ち続けた彼女は、第15期オーディションでようやくAKBの仮研究生となるものの、セレクションで振り落とされてしまう。レッスンを共にした向井地美音や大和田南那らが華々しく劇場で脚光を浴びる中、一般人としての暮らしに叩き返された彼女。叶いかけた夢が両手から零れ落ちる無念は、中学生の胸には耐えきれないほど重かったに違いない。
 続くチーム8の埼玉オーディションに落選した頃にはもう高校1年生。諦めて引き返しても誰も彼女を責めはしないだろう。だが、彼女はそれでも挫けなかった。そんな荻野由佳が遂に引き当てた一縷の光明こそ、バイトAKB、そしてそれに続く第2回ドラフト会議でのNGT48からの指名だった。

 ドラフトで荻野を指名した北原里英はこう語っている。AKB48の一歩手前で入れないところでずっと頑張っている彼女を、ここで花咲かせてあげられたらと思った――と。光を求めてもがき続ける彼女の汗を、涙を、先輩達は見てくれていた。諦めず挑み続ける心が、最後の1%を引き寄せたのだ。
 倍率千倍のオーディションを一発でパスしていくような天才達とは、荻野由佳は違うかもしれない。だが、諦めないことも才能の一つだ。「何があってもへこたれない」――その一点に関して神が彼女に与えたのは、紛れもない天賦の才だった。

天下に激震走る「新潟の逆襲」

 2015年8月、26人の夢を乗せて走り出したNGT48。だが、やっとの思いでその一員となっても、荻野由佳の眼前には最初から青空が広がっていたわけではなかった。48グループファンの読者諸兄は、流石にまだ忘れてはいないだろうか。初期のNGT48が、メンバー達の頑張りや地元の盛り上がりに反し、全国視点では不遇に次ぐ不遇をかこっていたことを。
 劇場オープンは当初の予定から大幅に遅れ、メジャーデビューの目処も全く立たず。秋元プロデューサーもレーベルのソニーも、同時期に結成された欅坂46の売り出しに掛かりきりで、NGTは後回しにされることの繰り返し。新潟開催の2016年度選抜総選挙でも、生え抜きメンバーからのランクインは加藤美南ただ一人。口さがないネットの住人達は「NGTは始まる前にオワコンになった」と声を揃えた。不肖私もまた、NGTの境遇が一年や二年で覆ることはなかろうと信じて疑わなかった。

 そんなNGTの命運が一夜にして変わったのが、「新潟の逆襲」と称された、あの2017年度選抜総選挙だった。速報1位に荻野由佳の名が呼ばれたときの、あの会場のどよめき。ネットを駆け巡った多くの陰謀論。一夜でシンデレラガールとなった荻野に向けられる、界隈内外からの好奇の視線。48グループの歴史の中でも前代未聞の衝撃に、彼女の心はオーディションに落ち続けた時以上に砕けそうになったかもしれない。
 だが、彼女はくずおれた身体を再び立ち上がらせ、全霊で現実を受け止めた。総選挙最終順位第5位――「神7」という栄誉を。

 柏木由紀、指原莉乃、松井珠理奈、松井玲奈、山本彩、島崎遥香、宮脇咲良、須田亜香里。「初代神7」以降、2016年までの総選挙で7位以上に入ったのはこの8名のみ。700人を超える歴代在籍メンバーが努力に努力を重ね、血で血を洗う人気争いを10年以上繰り返しても、「神」の高みに立つことができた者は僅か15人に過ぎなかった。
 誰もが予想しえなかった16人目。一夜にしてその名を48グループの歴史に深く刻みつけた彼女は、テレビを通じて全国の目が注がれる中、マイクの前で声を震わせ、初代総監督とファンに問いかけた。「わたしは、『努力は報われる』を今、証明できていますか」――と。

 誰が彼女を神7にしたのか。投票イベントの度に躍進を続けるNGT48を語る際には、未だ明るみに出てこない「柱王」なる存在の話題が常に付いて回る。酔狂な個人か、利権の絡んだ法人か、新潟財界の支援か――その正体をここで問い質すのは野暮というものだろう。重要なのは正体ではなく、その何者かが荻野由佳に目をかけたという事実だ。
 何も頑張らず、アイドルになれただけで満足しているような子には、個人であれ法人であれ大金は出さないだろう。推すだけの理由が荻野由佳にあったから、「柱王」は彼女を推した。それは突き詰めれば、一般のファンがただ一枚の投票券を捧げる相手を決めるのと何ら変わらない。誰がその価値を否定できようか。北原キャプテンの心を動かしたドラフトと同じく、彼女の弛まぬ努力が出資者の心を動かしたのだ。

 不屈の精神で夢を掴んだ少女、おぎゆかの第一章はこうして美しく締めくくられた。だが、現実は、おとぎ話のように「めでたしめでたし」とページを閉じて終えることはできない。一年に一度、総選挙は必ずやってくる。

三度目の総選挙、問われる真価

 総選挙は一年間の通信簿である――と、これもまた高橋みなみがAKBに残した言葉である。前年の総選挙で上位だった者も、下位だった者も、翌年の総選挙では誰もが等しく一年間の価値を問われる。聖域メンバーであろうと弱小メンバーであろうと、一年という時間だけは平等だ。
 荻野由佳は良い意味で何も変わっていない、と、彼女を知るファンは口を揃えるだろう。この一年、降って湧いた「神7」の地位に気を緩めることもなく、彼女は変わらぬ努力を重ね続けてきた。歌番組で衆目を集め、握手会でも呆れるほどの神対応を維持し、既存ファンの前でも新規ファンの前でもそれまで通りの彼女であり続けてきた。総選挙の大躍進で変わったことといえば、従来は限られたファンの目にしか映らなかった彼女の頑張りが、爆発的に多くの人に知られるようになったというだけである。

 今年もまた「柱王」は彼女に味方してくれるのか。それは速報発表の瞬間まで誰にも分からない。だが、たとえその助力が得られずとも、彼女にはもう心配は要らないはずだ。昨年の「柱王」は、魔法のドレスとカボチャの馬車を与え、灰まみれの家から彼女を連れ出してくれただけ。己の足で舞踏会に乗り込み、王子の心を射止めるのは、シンデレラ自身の努力に他ならない。
 今こそ真価を見せつける時だ。巨額の出資者の助けなど無くとも、彼女はもう自力で戦える。「いっぱい笑え」とのアカウント名の通り、笑顔の準備をして見守りたい。シンデレラストーリーのその先で、努力の天才が見せてくれる新たな物語を。

(文責 板野かも)

執筆者の紹介

板野かも

板野かも

作家・ライター。
AKB48グループをはじめとする女性アイドル関連の芸能記事を多く手がけ、また2017年よりWEB小説サイト「カクヨム」にてアイドルをテーマにした小説を執筆。WEB文芸界きってのアイドル通として知られる。

NGT48にも強い思い入れを持ち、NGTが未だ不遇をかこっていた2017年春には、NGTメンバーをモデルとした未来の新潟のアイドル達の奮戦を描いた小説「48million ~アイドル防災都市戦記~」を執筆。
2018年5月現在、NGT48の誕生を描くドキュメンタリー小説「Project TOKI」をカクヨムにて連載中。

告知

現在、WEB小説サイト「カクヨム」にて、板野先生の執筆によるNGT48のドキュメンタリー小説「Project TOKI」が連載中です。NGTファンの方は漏らさずチェック!

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